玉ねぎの値段が高くなっている理由(令和4年)

こんにちは。清水園芸です。

近ごろ(令和4年5月)、スーパーなどに野菜を買いに行くと、玉ねぎの価格が高いことに驚く人も多いのではないでしょうか。実際に数か所のスーパーで価格を調べたところ、1個で160円前後の価格で、200円を超えている例も。

平年では20円台で買えるので、高騰と言ってもよい状況です。この値段はやはり異例で、ニュースにもなっています。

いったいなぜこれほど値段が上がっているのでしょうか?

今回はこの理由を探ってみます。

目次

報道されている「玉ねぎ高騰の理由」は?

ニュースサイトやTVを見ると、北海道の玉ねぎが記録的不作のうえ、佐賀県産なども生育が遅れ、市場で品薄になっている事が高値の理由と言われています。

生鮮食品は市場によって価格が決まるため、需要に対して供給が不足すれば価格は上がります。価格が上昇するのは市場の原理で仕方がないでしょう。

それにしても、それほど品薄になってしまった理由は何なのか、もう少し詳しく調べてみます。

北海道産が厳しい状況

通常、この時期に売られる玉ねぎは昨年中に栽培された北海道産のシェアが大きくなっています。(令和3年度のデータでは、そもそも日本の玉ねぎの生産量の2/3以上が北海道産)

シェアが大きいということは、その産地の品物が減ると市場に穴が開きます。今年はそれが起こってしまいました。

涼しい北海道での玉ねぎの作り方は、本州以南の作り方と違います。北海道では4月に播種、5~6月に定植、8月下旬~9月に収穫となります。秋に収穫されたものが貯蔵され、翌年まで日本中に出荷されます。

昨年、北海道は夏が干ばつで異常に雨が少なく、玉ねぎの生育期に大きなダメージを与えてしまいました。そのため北海道産の玉ねぎが予想より収穫できず、大不作となってしまいました。

昨年の夏の異常気象の影響がいまになって顕在化したと言えます。

玉ねぎの国内リレー栽培

玉ねぎは収穫後、生きたまま、生鮮食品として長く貯蔵できる作物なのですが、無限に貯蔵できる訳ではなく数か月が限界です。

特に暑さ、湿度に弱いので「夏越し」貯蔵は難しいとされています。温度湿度をコントロールした倉庫で保存すれば理想的ですが、コストがかかってしまいますしそれでも無限に貯蔵はできません。

そこで一年中玉ねぎを入手するため、日本各地で栽培期間をずらしていく「リレー栽培」が行われています。リレー栽培は日本各地で気候が違うことを利用し、生産者には市場シェアを分け合えるメリットがあります。

玉ねぎの作り方(時期)

では実際の玉ねぎ栽培の基本的なスケジュールをざっくりと見てみましょう。

作付けの時期

・北海道では、4月に播種、5~6月に定植、8月下旬~9月に収穫

・一般地では、9月に播種、11月頃に定植、5月下旬~6月上旬に収穫

つまり北海道で収穫が終わり、それを販売している間、他の地域で玉ねぎが育ち、初夏に新玉ねぎが登場します。そのあと一般地の貯蔵ものを販売し、晩夏に北海道産の新玉ねぎに繋げる形が基本になっています。

北海道産の玉ねぎは秋冬の寒い時期に貯蔵されるので「夏越し」にはならず、長く販売できます。

北海道の冬は寒く雪もあるため、冬越しの栽培はできませんが、その代わり他の地域と違う作り方で違う時期に収穫ができる事はメリットになります。さらに北海道の玉ねぎの生産量は日本で圧倒的です。日本国内では北海道産の玉ねぎの存在が市場にとって重要なことが分かります。

佐賀県産の出荷が始まったが改善されていない

暖かい地域の佐賀県や長崎県の玉ねぎは、北海道産の次に最も早く新玉ねぎが出てきます。

しかし、佐賀県産も冬が厳しく寒かったために生育が遅れ、出荷時期がズレてしまいました。ただ遅れているだけであれば、待っていれば出荷されてくるので品薄は改善するはずです。今年の3月頃は5月に入れば佐賀産玉ねぎの出荷が始まる事に期待が持たれていました。

そのため5月現在の時点で小売価格は下がっていません。原因は詳しく分かりませんが、高値の間に新玉ねぎとして売り抜くため早出しが進んだ可能性なども考えられます。

他県産が出回っても改善が難しい理由

とはいえ、他県産が順調に出回ったとしても値下がりには繋がらない可能性があります。

令和3年産の玉ねぎ出荷量のトップ5のデータを引用します。

順位 都道府県 出荷量(トン)
北海道623,400
佐賀93,600
兵庫91,400
長崎29,500
愛知24,700
全国988,500
農林水産省 令和3年産指定野菜(春野菜、夏秋野菜等)の作付面積、収穫量及び出荷量 より

北海道産のシェアが圧倒的で2位以降とはかなり差があります。北海道産が全く足りない分を補うことは望めないでしょう。

輸入しても改善が難しい理由

国内産が不足しているなら、海外から輸入することで補えるように思えます。

令和2年の日本の玉ねぎ輸入量のデータを引用します。

順位 国名 輸入量(トン)
中国210,281
ニュージーランド5,665
アメリカ2,210
オーストラリア987
タイ792
韓国18
オランダ5
世界219,960
財務省貿易統計(輸入) 令.2(2020) 年計 玉ねぎ より

こうしてみると中国産があれば、なんとかなりそうに思えます。しかし新型コロナウィルス感染拡大によって国際貿易が滞っていて、燃料価格の高騰もあり、国際貿易自体がかつてほど低コスト低リスクではありません。

しかも今となっては、ロックダウンが続いている中国からの輸出は期待できないとされています。この異例の状況で、いままであまり目につかなかったオランダ産なども販売されています。

ともかくデータを見ると、中国以外の他国から輸入しても微々たる量しか期待できなそうです。

玉ねぎ高騰の理由は様々の原因が重なっている?

以上、日本国内の玉ねぎ価格の高騰の理由を探ってきましたが、その理由はいくつもの問題が重なっているという印象です。
それだけに、一つの問題が解決しただけでは供給の改善と価格の低下には繋がらない可能性があります。新型コロナウイルス、石油燃料の高騰などの国際問題もありますが、日本国内に限れば、天候不順の影響が大きく尾を引いているといえます。玉ねぎだけではなく、以前は北海道産ジャガイモの不作も大きな影響がありました。

天候不順の原因はまだ議論がありますが、気象災害が増えれば、人間は災害で直接の被害を受けるだけでなく、のちのち、食料の面でも影響を受けることが分かります。食料生産に与える影響はタイムラグがあり、長引くものですが、気づきにくく、気づいたときには手遅れとなっている場合も有り得ますので注意が必要です。

玉ねぎの価格が下がるのはいつごろ?

では、玉ねぎの価格が下がるのはいつ頃になるでしょうか。北海道産の玉ねぎの出荷が始まる8月以降と考えられます。

基本的には、今年の北海道以外の地域で玉ねぎの収穫が終わっても、あまり改善は見込めない可能性があります。データで見たように日本の玉ねぎ生産量の上位で北海道以外の産地は、暖かい地方で出荷は5月からの時期です。この上位の地域の出荷のピークが終わったころに、価格の傾向がはっきりするでしょう。6月~7月で改善しなければ、秋の北海道産の出荷が始まるまでは望み薄となりそうです。

ただし、現在の高値は相場感で高騰している面もありそうです。今年の北海道の玉ねぎの植え付けが終わり、夏の生育が順調にいけば、安心感から少しは価格が落ち着くかもしれません。

あるいは、例えば東南アジアの小玉ねぎなど、厳密には玉ねぎではない、シャロット類などが代替品として輸入されるかもしれません。

国産に限って言えば、今年の玉ねぎ価格はしばらく高値安定の確率が高いです。天候不順や天災など起こらず、玉ねぎが豊作になってくれることを祈りましょう。

参考資料

農林水産省 令和3年産指定野菜(春野菜、夏秋野菜等)の作付面積、収穫量及び出荷量

財務省貿易統計(輸入) 令.2(2020) 年計 玉ねぎ

「タマネギ高値続く 平年の倍 輸入も含め不足感」日本農業新聞 3/28

「産地リレー」うまくいかず…タマネギ価格高騰 買い物客も「困ります」 日テレNEWS 4/4

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